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eSIM、embedded SIMとは?

SIMの形状は3種類あります。現在のスマートフォン等で多く利用されている「カード型」、ICチップ形状の「チップ型」、ICカードの特徴をソフトウェアで仮想的に実装した「ソフトウェア型」です。

eSIMは “embedded SIM” という名の通り、基板上に取り付けて利用するICチップ形状のSIM(チップ型SIM)を指します。日本では「組み込みSIM」とも呼ばれます。

eSIMはすでに社会で一般的に使われています。スマートフォンなどに内蔵されているモデルも増え、用途や期間で通信プランを選択し、eSIMをインストールして利用することも一般化しました。本説明では、あまり知られていない産業機器やウェアラブルデバイスなどに内蔵されているIoT用途のeSIMについて説明します。

SIMとは何かは、別途こちらをご参照ください。

チップ型SIM、eSIMのメリット

チップ型SIM / eSIMのサイズ

チップ型SIMは、カード型SIMの最小サイズである「nano SIM」(下図の右から2番目)の約半分のサイズで、これにより製品を小さく作ることができます。

下図の一番右がチップ型SIM(eSIM)です。

カード型SIM(左)とチップ型SIM(右)
カード型SIM(左)とチップ型SIM(右)

カード型SIMを利用するには、SIMコネクターモジュールも基板上に実装することになります。このモジュールはカード型SIMよりも必ず大きくなります。最終的な製品サイズを小さくしたい場合には、チップ型SIMを検討してください。

カード型SIM向けのコネクタモジュール(左)と、チップ型SIM(右)のサイズ比較

カード型SIM向けのコネクタモジュール(左:Wio LTE JP Version上)と、チップ型SIM(右:Wio 3G SORACOM Edition)のサイズ比較

チップ型SIM / eSIMの耐久性

チップ型SIMは基板上に直接はんだ付けします。このため、振動と盗難に強くなります。また、温度耐性も高く、自動車に搭載するような製品にもセルラー通信を導入できる可能性が広がります。

もちろん、チップ型SIMだけでなく、基板上の他の部品やモジュールについても同様の耐環境性能が必要となりますが、今までのカード型SIMでは諦めざるを得なかったようなシーンでも利用可能となり得ることから、注目されています。

カード型 SIM チップ型 SIM (eSIM) チップ型 SIMのメリット
最小の形状 nanoサイズ: 12.3 × 8.8 mm (4FF) 6.0 × 5.0 mm (MFF2) 実装面積の節約
実装 取り外し可能 基板へ固定 盗難や不正利用の抑制、対振動性の向上
温度耐性 -25℃ ~ +70℃ -40℃ ~ +105℃
※Industrial Grade
動作環境の拡大
メモリサイズ 64KB ~ 128KB 500KB ~2MB 多くの接続プロファイルや機能の実装
書換耐性 10万サイクル / ~10年以内 50万サイクル / ~17年以内 長期の信頼性
暗号強度 3DES、AES、RSA 3DES、AES、RSA、RCC、SHA、HMAC 強固な暗号化

「形状」としての eSIM

SIMの形状は3種類あります。現在のスマートフォン等で多く利用されている「カード型」、ICチップ形状の「チップ型」、ICカードの特徴をソフトウェアで仮想的に実装した「ソフトウェア型」です。

このうちeSIMは “embedded” という名の通り、基板上に取り付けて利用するICチップ形状のSIM(チップ型SIM)を指します。

eSIMのサイズ感
チップ型SIM(左) とカード型SIM(右)

「内容の書き換え」としての eSIM

SIMの交換をすると、通信キャリアが切り替えられます。通信可能な国や地域、有利な通信プランが選べるわけです。カード型SIMであれば簡単に交換できますが、チップ型SIMは基板に直接取り付けるため、後から交換することが困難です。これは、通信キャリアの切り替えが難しいことを意味します。

そこで考えられたのが Remote SIM Provisioning(RSP)です。無線通信でSIMに記録された情報の内の書き換えを行い、接続する通信キャリアを切り替えをする仕組みです。移動体通信事業者や関連企業から構成される業界団体、GSMA(GSM Association)によって標準化されている技術でになります。RSPにより、チップ型SIMでもカード型SIMの交換と同様に通信キャリアの切り替えができます。

このRSPによる書き換え可能なSIMの事を “eSIM” と呼ぶこともあります。GSMAによるeSIMの定義もこちらによるものです。RSPはSIMの形状を限定しておらず、SIM内部に書き換え可能なセキュア領域(セキュア・エレメント)があれば書き換え可能です。そのためチップ型SIMはもちろん、カード型SIMでも書き換え可能なSIM、すなわちeSIMと称することがあります。ソフトウェア型の書き換えの標準化はこれからであるため、GSMAの定義からは外れますが、eSIMと称している場合もあります。

チップ型SIM / eSIMの実務

チップ型SIMは、既に利用が可能です。ここでは実装と調達について解説します。

チップ型SIM / eSIMの実装

チップ型SIMの実装については、SIMの提供者からデータシートを入手するのが確実です。ソラコムが取り扱っているチップ型SIMは「ETSI TS 102.671」に準拠しており、データシートを公開しています。

実装作業は、カード型SIMコネクターモジュールと同じ要領で表面実装です。同モジュールの実装経験があれば扱える可能性があります。電気的特性は、SIMコネクターモジュール+カード型SIMと等価です。SIMのアクティベーションは、SORACOMのチップ型SIMであれば、カード型と同様にオンラインで行えるため、ハードウェア実装側での考慮は不要です。

そのため新規の製品だけでなく、カード型SIMで実装済みの製品をチップ型SIMに切り替えることも検討できます。チップ型SIMへの切り替えを検討する際には、特にピンアサインを確認するようにしてください。

チップ型SIM / eSIMの調達と生産

チップ型SIMの調達・購買は、主に通信キャリアを通じて行います。基本的にはカード型のSIMの調達と同じです。

しかし、生産の視点ではチップ型SIMは、他の部品同様に半導体部品として扱うことになります。ここで注意したいのがOEM/ODM生産をする場合の回線契約者と調達者の関係です。

チップ型SIMの契約や接続情報は、カード型SIMと同様に調達者にひもづきます。そこで、生産委託元が調達者としてチップ型SIMを調達し、委託先へ部品供給するのがシンプルです。しかしOEM/ODM先によっては、委託先での直接調達のみ認めている場合もあります。この場合は調達者と契約者が異なるため、契約者の調整が不可欠です。OEM/ODMの委託先選定時には、チップ型SIM提供側も含めて確認しておきましょう。

また、生産委託先が海外の場合は調達者による輸出になることがほとんどです。手続きは調達者自身で行うことになるため、そのプロセスも確認が必要です。特に必要なのが、輸出に関する法律「輸出貿易管理令」に基づいた書面である該非判定書 (パラメータシート)の準備です。こちらはSIMの提供者に問い合わせましょう。

試作用のチップ型SIM / eSIM

チップ型SIMの調達は、量産向けとしてリール(3000pcs(個)/リール)で行います。一方、試作をしたい場合はチップ型SIMの販売元に試作用の製品を供給してもらうという方法があります。

ソラコムでは10pcs(個)/シートという試作向けのチップ型SIMパッケージも用意しており、チップ型SIMを用いた試作に取り組みやすい環境を提供しています。